個人事業主が車を購入した場合、仕事で使用するものであれば購入費用を経費として計上することが可能ですが、実はいくつかのポイントを押さえることで、より多くの税金を節約することができます。
この記事では、公認会計士のKOYAMAさん監修のもと、個人事業主が車購入時に極力節税するために検討したい5つのことについて詳しく解説いたします。
個人事業主が車購入時に節税できる理由
個人事業において、仕事場に出かけたり物を運搬したりと車を利用して業務を行う機会は少なくありません。
あればあるだけ便利な車ですが、実際そのために購入するとなれば、個人事業主は車の購入費用を経費として計上することが可能です。
車の購入費用は一般的に高額ですので、そこを経費として計上できれば利益を小さくするともでき、高い節税効果が認められるでしょう。
しかしながら車の使用用途によっては経費計上が難しい場合もあります。
その点、少し複雑にもなってきますので、後々に経費計上が認められず追徴税を取られてしまわないためにも、経費計上が可能であるかしっかりと見極めておく必要があるのです。
プライベートと兼用する場合は仕事で使った割合のみ経費として計上できる
完全に業務で使用するのみの用途で車を購入するのであれば、かかった費用の全てを経費とすることが可能です。
とはいえ仕事のためにと車を購入したとしても、プライベートと兼用したいと考える個人事業主は少なくないでしょう。
その場合は、経費計上の方法が少し複雑になってきます。
仕事とプライベートをどういった配分で使用しているかによって経費計上ができる割合が変わる、「家事按分」という制度があります。
これは使用日数、使用頻度を根拠として経費を計算するもので、例えば平日は仕事に、土日祝日はプライベートに使用しているのであれば、「平日5日間分」が経費計算に認められるという仕組みになっているのです。
個人事業主が車購入時に極力節税するために検討したい5つのこと
原則として、車の購入金額全額を購入年度に経費計上することはできません。
車は購入後数年使い続けることが一般的であるため、使う年数に応じて少しずつ経費にしていくという考え方があります。
そのため、耐用年数に合わせて、分割して経費計上を行わなくてはなりません。
この制度は「減価償却」と言い、車に限らず長期的に使える高額なものを購入した際に適用されます。
とはいえ、必要なポイントを押さえておけば大幅な節税が可能であることには変わりありません。
これから、車を購入し、それによって極力節税を目指していくのであれば検討しておきたい5つのことについてご紹介します。
【1】新車ではなく中古車を購入する
中古車は新車と違い、既に数年単位で使用されている場合がほとんどです。
そのため新車と比較すると、耐用年数が短いと認められ、「減価償却」の適用期間も短くなるのです。
中古車の耐用年数は、次の計算方法で算出が可能です。
(新車購入時の法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
この値が2年未満となった場合は、一律で2年として計上されるので注意しましょう。
計算式に当てはめると、4年落ちの中古車を購入できれば1年で「減価償却」の期間が終わり、早く経費計上が可能となります。
【2】白色申告ではなく青色申告で確定申告を行う
個人事業主が行う確定申告には、白色申告と青色申告の2種類が存在しています。
青色申告は複式簿記で帳簿作成をしなければならないので難しい傾向にありますが、その分65万円の特別控除を受けられます。
シンプルに確定申告を行いたいというのであれば白色申告の方がおすすめですが、節税を考えるのであれば、計上できるものも増えるので、青色申告一択です。
【3】30万円未満の車を購入する
「減価償却」は車を購入すれば基本的に適用となる制度ですが、一部例外が存在しています。
それは、30万円未満の車を購入した場合です。
「少額減価償却資産の特例」と呼ばれ、30万円未満のものを購入した場合は、年300万円までは一括で経費計上ができるという制度です。
ただし、この制度を利用するには、ある条件に注意しなければなりません。
令和4年に改定された最新の条件は以下の通りです。
確認し、当てはまるのであれば上手に活用し節税効果を高めましょう。
- 令和6年3月31日までに取得し、事業用に用いるものであること
- 個人事業主本人が青色申告を行っていること
- 常時使用する従業員の数が500人以下であること
- 連結法人に該当しないこと
- 適用除外事業者に該当しない中小企業者、または農業協同組合等に該当すること
30万円未満の車を購入した場合、一括で経費として計上できるのは青色申告のみ
「少額減価償却資産の特例」を適用させるための条件の1つに、青色申告を行うことが義務付けられています。
青色申告は、前述のとおり特別控除も受けられるなど、それ自体の節税メリットも享受できる申告方法です。
減価償却と合わせて行うことで節税効果を一層高められますので、積極的に検討すると良いでしょう。
【4】カーリース契約をする
車の購入は車両費用だけでなく、車の維持費など様々な費用がかかってきます。
しかしカーリース契約を結ぶことで、より節税効果を高められる可能性もあるのです。
リースの場合は定額制で車に乗ることができるサービスであり、個人所有とは異なります。
そのため維持費用がかからない他、「減価償却」の計算や資産計上をしなくてよいので確定申告を楽に進めることができます。
【5】定額法ではなく定率法を適用する
「減価償却」を行う際には、「定額法」と「定率法」という2つの方法が存在します。
「購入価格÷耐用年数」で計算するのが定額法である一方、定率法は「未償却残高×定率法の償却率」で計算します。
分かりやすいのは「定額法」と言えますが、定率法の方が初期段階での減価償却費が大きくなるので、節税を目指しているのであれば「定率法」で計算すると良いでしょう。
ただし、個人事業主が定率法を適用するには届出が必要
個人事業主の「減価償却」では、基本的に「定額法」が適用されると定められています。
しかし、「減価償却資産の償却方法の届出」を税務署に提出すれば、「定率法」の適用が可能です。
初期段階の節税を求めるのなら、この届出を利用しましょう。
ポイントを押さえて最大限節税しよう!
今回は、個人事業主が車を購入する際に抑えておきたいポイントについてご紹介しました。
国税庁が定める規則にのっとり適切な手続きを踏むことで、大幅に節税効果を高めることも可能です。
車の購入を検討するのであれば、ぜひお試しください。